相撲は日本の文化として、また優れた格闘技として、実に奥が深く魅力的である。

 相撲界に身を置き、力士現役時代には辛抱することの重要なこと、素直な気持ちの大切なこと、勝負の時ばかりでなく日常から気迫が大切なこと、等を学んだ。

 親方となり、部屋を起こし弟子を教育するようになってからは、更に常に夢に向かい信念を持って進むこと、現役時代とは違った意味で本当の辛抱の大切なこと、などなど、いろいろ教えられると共に、今現在も学び続けている。

 相撲は自分にとって人生そのものであり、今日の自分を育ててくれたかけがえのない存在である。




 相撲界には伝統的な稽古方法がある。シコ・テッポウ・すり足・ぶつかり稽古等々。これらは長い歴史の中で先輩方が編み出した相撲独特の稽古法であり、現代のスポーツ学から見ても、相撲という格闘技に適した合理的なものである。

 だから稽古の基本はあくまでもこれら伝統の稽古法であることは当然である。しかしまた、近代スポーツ学に基づく筋トレやコンディショニング等をも軽視せず、相撲にあった取り入れ方を工夫しながら導入することも、どん欲に行なっていきたいと考え、適宜実践している。

 相撲界には「三年先の稽古」という言葉がある。力士としての体づくり・自分にあった相撲の型や技・怪我に強い体質等は、けして一ヶ月や二ヶ月の特訓などでは作り上げることはできない。それ故にこそ、二年三年先の自分の姿や目標をしっかり頭にたたき込み、そこに到達するために今何をすべきか、そして目標に向かってどのように成長していくか、更にそのための努力をいかに継続するか、ということが問われるのである。

 それを自分一人で不断に実行することは、経験的に言って大変難しいことである。ことに怪我やスランプにおちいったとき、自分に負けてしまうケースが多い。そんなときこそ初心に返り、素直な気持ちになって稽古に励むことが肝要である。


 相撲という競技は肉体的な強さは勿論であるが、精神面の強さ充実ぶりがなんといってもものをいう。

 不断の稽古を継続していく信念の強さ。怪我等の逆境に負けない強さ。勝負における気迫。そのどれを欠いても一流の力士にはなれない。そうした精神の強さは、他ならぬ日常の稽古の中からはぐくまれるものである。

 また、国技大相撲のプロの力士としての自覚を持ち、礼儀を重んじ誠意を持って、魅力のある人間に育ってほしい。
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